第6回講演会「人首の地質と宮沢賢治」

第6回講演会「人首の地質と宮沢賢治」01

第6回講演会「人首の地質と宮沢賢治」02

【開催日】平成22年1月31日
【講 師】原子内貢 氏
【会 場】米里地区センター

人首の町は人首川によって形成された「河岸段丘上に形成された町」である。山間にありながら山が急迫せずに明るく広々としている。これは今から1億年以上も前に、地下に大規模のマグマが入り込み、ゆっくり冷え固まり、長い間の風化・浸食によって地表に出てきた花崗岩から出来ていることによる。花崗岩は白い石英・長石という鉱物と黒い黒雲母・角閃石という鉱物からできているので、白黒が混合しているゴマ塩ににているのでゴマ石、産地から名称で御影石とも呼ばれている。鉱物結晶が大きく風化しやすいので、崩れやすくなだらかな地形をつくるからである。「人首花崗岩」は千厩・大東・伊手・人首・梁川まで続く30km以上にもおよぶ日本でも有数の細長い岩体である。岩石の形成された時期は陸上に恐竜が、海の中にはアンモナイトが泳いでいた時期に形成されたことが、岩石中にふくまれている放射性元素を用いて推定できます。
マグマの入り込み(貫入)によって、周囲の岩石が熱による変成を起こし、石灰岩は白い大理石に、砂岩や泥岩は硬いホルンフェルスという変成岩になり、東は上大内沢〜赤金鉱山、西は火石沢〜下伊手に分布している。採石はホルンフェルスを用いていることが多い。またマグマが周囲の岩石に押し入って貫入するとき、周囲の岩石がマグマ中に落ち込み、溶けきれずに固まった物が花崗岩中に黒いシミのように残っている、これを捕獲岩(ゼノリス)といい、花崗岩の周縁部にみられる。マグマが貫入するとマグマに含まれていたガス成分と周囲の岩石、特に石灰岩の成分と反応して有用元素は密集して鉱床をつくる。マグマの残液が周囲に貫入して含金石英脈をつくることも多い。
人首花崗岩の西端である火石沢〜下伊手間には輝緑岩及び蛇紋岩が分布し、熱変成を受けて硬くなり屏風のように突き出ている。玉里・藤里を吹きつける西風がこの屏風によって弱まり、人首や伊手を穏やかな気候にしているかもしれない。宮澤賢治が伊手郵便局に投函した手紙の裏面にある絵はどこを描いたものか諸説あるが、前述の蛇紋岩で出来た銚子山(藤里と伊手の間にある山)を描いていることに間違いはないであろう。少なくとも種山方面や阿原山であり得ない。なぜならそれらの方向には蛇紋岩がないからである。